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創作、ブンゲイファイトクラブ、六枚道場について綴る文芸にんげん。あとたまにラーメンと仮想通貨。ラーメンライター。

【ブンゲイ実況】BFC2本戦、Eグループ【20201209】

こんにちは。ハギワラシンジです。
2020年12月9日に行ったブンゲイ実況のまとめを、 ここに残したいと思います

BFC2本戦、Eグループより、白川小六さん「地層」を実況させて頂きました。

白川さんプロフィール

twitter.com


いやー、面白かった。
深読みしすぎたかもしれませんが、いのりくんと楽しく読みました。では以下リンクと感想、実況内容です。

実況リンク





感想、実況内容

こんな自然災害が起きているのに、この家族たちは明るく、たくましく生きている様子が描かれている。
最初は底抜けに明るい物語だなと読んだが、読み進めていく内にこれは、「災害を生き延びられ無かった視点がない」んだなと感じた。
3ページ辺りに「泳げる生き物は大丈夫だ」と書いてあるのは「この災害を生き延びる能力がある人たちは大丈夫だ」の比喩と読めるし、カラスたちはどこかに行きたても行けない人々を暗示しているように読める。

そして「私」含めた子供たちは、適応できなかった人たち、「地層」になったものたちへの想像力に一切関心が無い。
この災害もどこか非日常として楽しんでいるかのように思える。(台風の日にはしゃぐみたいに)

思い返してみれば一ページ目に泥を「チョコ色」と感じているのも、泥を怖いものとして見ていないから、こんな風に言えるのだと思う。

ただ、この話の良さはを「持つ者」「持たざる者」の対立構造を、明確に、批評的に書いていないところじゃないかと思う。

単に「持つ者が持たざる者の地層の上に、笑顔で暮らしている」だったら興覚めだった。
この作品はそういう説明的だったり、説教臭かったりするところが一切なく、幸せな家族の幸福な一風景として読めるのが良い。
もう大体のものが淘汰されてしまって、残ったものたちが単純に明るく青空を見上げている。そういう「どうしようもなさ」が、
悪く描かれずに、あるがままに描かれていることに感動した。

最後に父親が「家はまた建てればい良い」と言う。
これは子供が直後で少しだけ不安な様子を見せていることに対しての「励まし」と読むのが素直な読み方だろう。
でも、この言葉を言ってしまったことで子供たちが「そうか、家なんて建て直せばいいんだ」という思考になっていくな……と感じた。
「泳げなかったものたち」への想像力の一切を欠いたまま、子供たちは大人になって、地層になっていくのだろうな。

以上です。読んで下さり、ありがとうございました。