頼むから自由にしてくれないか?

集中力の無いはぎしんが注意散漫に書き綴るブログ。

短編小説

ラタトゥイユ(短編小説)

ベッドで横になっていると、ああ、天井を一枚の絵のように空想してしまう。 絵には彼女の姿が描かれている。僕はそのとき絵の中ででことことラタトゥイユを煮込んでいた。 「火加減はどう?」 「完璧」 「ははは」 彼女の姿はそう言った。僕は勝手に鍋を火に…

電車にて(短編小説)

部屋から出ると電車。 横で誰かが寝ていて、前で誰かがスマホ打っている。小竹向原、と電車が言う。 もう30度を越えたと言うのに社内は弱冷房で、脇の下がじっとり濡れている。 座席に座った誰もが寝ている。ベッドでは寝ない。自分の部屋で寝たはずなのに…

人の形をした群青(短編小説)

「最初に書かれた小説はきっと、死体の中にガトーショコラを見出したのだろう。二者択一の状況で、自分の後悔と救いの感情に突き動かされ、大切なものあるいはそうではないものに、大事な何かを比喩したのだろう」 僕は小説を読んでいた。ベトナムコーヒーを…

棄て去れ汝の血と涙、と面接官は言った

風が吹き始めた午後。 僕は面接に行く。今日は製造業界で老舗のメーカーだ。職種は製造オペレーターで、言い訳を弾丸に詰める仕事だ。そんなにやりたくない仕事だけど、待遇面は抜群。 僕は頭の中で繰り返す。 「志望動機は二つあります。転職理由は前職で紙…

開脚前転七日目(短編小説)

別にいつも開脚前転している訳じゃない。 多くて日に十回。少ないと一回もない。というところだ。 ユーザは九割がはりねずみでら残りの一割は名乗らないので何者か分からない。でも、おそらくはりねずみだろう。彼らはとてもシャイなので、名乗るのが苦手な…

母親が死んで悲しい

母親の葬儀の帰り、僕は旧友にあった。 その夜は美しい夜だった。春でもないし冬でもない。留まってもいなければ漂ってもいない。何を選択する必要もない、ゆるやかな夜だった。 僕は旧友の二人を見つけ挨拶をした。二人も僕を認め近寄ってきた。 「久しぶり…

Proof of Mine

その日、私はハードフォークした。もう昔の私との互換性はない。 私は元々、ブロックサイズが人より小さく、スケーラビリティに問題があった。生まれてからの数年は、社会との関りも少なく、トランザクションが混み合うこともなかった。 しかし、社会人にな…

異世界住人短編集

狩りが終わり、獲物を持ってギルドで精算しに行く。 この時期のヤマミヤガシの肉は少し高く売れる。冬に向けて餌を溜め込み始めるからだ。アーシュの街にギルドはある。大体街の中心辺り。回りには冒険者用のお店が立ち並んでる。武器屋、防具屋、薬屋、酒場…

アスパラガスは夜の沈黙(短編小説)

たくさんさける。いやなことから裂ける。いやなことを避ける。いやなことだって咲ける。 激しく芽が出る。人間の元に突如として現れた緑色の細長い植物。それは人をストレスから解放した。それを握って「turn(曲がれ、さけろ、回せ、ひねろ、切り替えろ、と…